人に有益な「栄養成分生産機」としてのユーグレナの可能性
細胞内の葉緑体を用いて光合成を行う微生物「ユーグレナ」は、動物的な性質も有しており、人や家畜にとって有益な栄養分を大量に生産します。
ユーグレナが作り出す栄養成分は、多糖類の「パラミロン」を始め、ビタミンB1・B12を除く全ての水溶性ビタミン、脂溶性ビタミンのビタミンE、必須アミノ酸や必須脂肪酸など、数え上げればきりがありません。しかも、ユーグレナは自然界で広く生息しているだけでなく、人工的に培養することも難しくないとされています。
その為、ユーグレナを使った、より効率的な有用成分の生産方法の研究は、非常に有意義なものと言えるでしょう。
光合成培養は『光』の種類で効率が変わる?光質とCO2濃度の関連性は?
光合成は一般的に、太陽光などの「光」をエネルギー源として取り込み、水と二酸化炭素(CO2)を分解・再合成することで、酸素(O2)や糖類などを生産するシステムです。
それでは、光合成にとって有効な「光」とは“どのような光”でもいいのでしょうか?通常、光合成は「目に見える光(可視光線)」によって起こる生命現象です。そして、可視光線には赤や青など“色(波長)”の違いが存在します。だとすれば、ユーグレナの培養条件を考える上で、光の波長(光質)もまた重要なポイントとなり得るでしょう。
さて、ユーグレナの光質とCO2濃度の関連性については、大阪府立大学や三重大学など複数の研究機関からなる共同チームが、2006年6月に研究報告を発表しています。それによると、「赤・青・白」の光を、異なるCO2濃度の環境下でユーグレナに照射したところ、ビタミンCやビタミンEなどの生産量に有意な差が確認されました。
そして、ユーグレナは大気と同程度のCO2濃度で、さらに「青色」の光を照射された時、最も大量にビタミンCやE、β-カロテンなどの生成を行うとされています。
ビタミンCやEは人の体内で「抗酸化作用」を発揮し、老化防止に役立つと言われる成分です。しかも適正に培養されたユーグレナは、複数の緑黄色野菜と比べても栄養バランスに優れていることが認められました。
もしかすると、将来的には青色LEDとユーグレナを使った、総合的なビタミンの大量生産システムが実用化されるかも知れません。